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「人はかつて樹だった」(長田 弘)によせて


むかしから樹のそばが好きで、なんだか疲れたなぁというときなんかにはよく森や、植物園に出かけて好きな樹のそばに座って本を読んだり。ぼーっと空を眺めたり、お茶を飲んだり。

樹の傍らでそんな風に過ごしていると、いつのまにか身体の中からむくむくと元気が湧いてくるような気がして。樹のそばでたくさんの時間を過ごしてきました。

もしかして、私の祖先は人ではなくて樹で。間違って人に進化したんじゃないかな?なんて学生の頃ふと、思ったりしていました。

そんなときに出会ったのが、大好きな長田弘さんの詩集「人はかつて樹だった」。

ああ、やっぱりなぁ。タイトルを見てそう思って思わず買ってしまった1冊。

大好きな長田弘さんの詩集の中でも、大好きで、ふと読み返したくなる1冊です。

人はかつて樹だった

 

「むかし、私たちは」(長田 弘)

 

「木は人のようにそこに立っていた。

言葉もなくまっすぐ立っていた

立ちつくす人のように、森の木々のざわめきから遠く離れて、

(中略)

物語の家族のように、

母のように一本の木は、

父のようにもう一本の木は、

子どもたちのように小さな木は、 どこかに未来を探しているかのように、 遠くをみはるかして、 凛とした空気のなかに、

みじろぎもせず立っていた。

私たちはすっかり忘れているのだ。 むかし、私たちは木だったのだ」。

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そうだよね、やっぱり木だったんだ、と、この詩を読んで、なんだかうれしくなったのを覚えています。

私の祖先は、どんな樹だったんだろう。いまも、森で、長い時の旅をしているのかな。

 

 

動物の中に眠る植物の遺伝子

ところで、2015年の5月のNHKスペシャル「生命大躍進」を見ていたら、面白いことをやっていました。 一つの細胞から始まった40億年のいのちの進化。動物は、5億年前に突然「目」を獲得するのですが、なんとその「目」の起源を調べていくと植物の光合成を可能にする光センサーと同じだということがわかってきたのです。そこで立てられた仮設が、「植物の遺伝子が動物に移ったことが、動物が目を持てた理由である」というもの。

ある日、植物プランクトンが原生生物の生殖細胞の中に偶然入り込み(偶然というよりは奇跡?)、そこで植物のDNA細胞がまきちらされて、動物の遺伝子と結合することで動物たちは光センサーを手に入れた、そうなのです。

おお、やっぱり人の遺伝子のなかにも植物の遺伝子が入っていて。私は樹から進化したのかもしれないという想いはそんな身体の奥深くからのメッセージなのかもしれないなぁ、と思ったりもしました。

自分の中には動物としてのいのちと、植物としてのいのちが共存しているのを知ると、すべてのいのちは繋がっている、という想いがいっそう強くなるような、そんな気もします。

いのちって、本当に不思議なものですね。

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空と土のあいだの旅人

 

「空と土の間で」(長田 弘)

「どこまでも根は下りてゆく。どこまでも枝枝は上がってゆく。

どこまでも土は掴もうとする。

どこまでも枝枝は、空を掴もうとする。

(中略) 三百年、私はここに立っている。

そうやって、私は時間を旅してきた

(中略)

自由とはどこかへ立ち去ることではない。

考えぶかくここに生きることが、自由だ。

樹のように、空と土の間で」。

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私たちの何倍も何倍もの長い時を経て、いまそこにある。いのちのタイムカプセルみたいな存在でもあります。

風にそよぐ葉擦れの音。

暑い日にほっとくつろぐ、木陰をつくる大きな枝。

樹はいつも、自然に街のなかや公園や、暮らしの傍らにあって私たちの毎日に寄り添ってくれています。

そんな樹の遺伝子が、自分のなかにも眠っているなんて、なんだかとても勇気が出るような思いがします。

樹は、空とも、大地とも繋がっていて。

時に、根を張ることの大切さを。

時には、空を仰ぎ見ることの楽しさを。

時には、木陰をつくるように、ほかのいのちを憩わせるような優しさを、そっと教えてくれる、時の旅人。

森へ

なんだかちょっと、元気がないなというときには。

木々のなかを散策してみませんか。あなたの中に眠る木のように大きなエネルギーがきっと、目覚めてくれると思います。「森は魂が回復するところ」と、作家の田口ランディさんが何かに書いていたけれど本当にそう思います。人はかつて樹だったのだから。その太古の記憶がよみがえって、いのちがふと自分らしさを取り戻すのかもしれませんね。

さて、今度のお休みは、どこの森に出かけようかな。


水野 佳

ヨガとくらしのサロン LINGKARANG(リンカラン)主催 水野 佳 自然や季節を感じる暮らしを提案。親子で自然にふれる「森の親子ピクニック」や、味噌や醤油の仕込みWS、お寺でのヨガクラスなどをのんびり開催中。わんぱく2歳児の母。